(第四回)Z旗


ロシアとの戦争を想定して研究を続けてきた、天才戦術家の川上操六は遂に
勝機を見いだせず他界。後を継いだこれまた天才の田村怡与造も、ロシアに勝つための
研究に没頭し、過労の為開戦の前年に他界。

そんな状況下で清水の舞台から飛び降りる覚悟で開戦したものの、
貧乏国日本が戦費を調達するには国債を発行して
欧米政府に買ってもらうしなかく、その大任を負った蔵相の高橋是清が
欧米を行脚するが当然ロシア有利とみている各国政府は日本の国債を買ってはくれない。

なので局地戦であっても一度の敗北も許されない、勝ち続けなければならないという
極めて難しい状態での開戦となったが、そんな日本に救いの手を差し伸べたのは
ロスチャイルド家と縁の深いユダヤ人金融家クーン・ローブ商会のジェイコブ・シフであった。

なんとか資金の工面が出来て大陸へ進撃した日本陸軍は四軍編成で各地で苦戦しながらも
ロシア陸軍を打ち破り、それによって欧米で国債を売り戦費を獲得するという綱渡り戦争であった。

各軍の大将は以下の通り。

第一軍…黒木為禎
第二群…奥保鞏
第三軍…乃木希典
第四軍…野津道貫

大陸で戦う陸軍、特に第一軍の精強さはハンパ無く、多くの各国観戦武官を唸らせた。
しかしロシア本国を出発して極東へ向かったバルチック艦隊が旅順艦隊と会すれば
艦隊の戦力は日本の2倍。そうすると日本の連合艦隊に勝ち目はなく、
制海権を取られれば大陸の陸軍へ補給ができなくなり、この戦争はジ・エンド。

つまりバルチック艦隊が到着するまでに
旅順港内深くに立てこもるロシア旅順艦隊を全滅させる事が日本海軍の命題であった。

そこで陸軍が内陸部から旅順を攻略すべく、乃木の第三軍を指向するが
近代武装されたロシア軍(機関銃とか)の前にものすごい数の犠牲を払い、
旅順を攻略できない第三軍。

このへんも坂の上の雲や映画「二百三高地」を参照。
もはや日本の命運つきたかに見えたが、満州軍総参謀長の児玉源太郎が
旅順で乃木に代わり一時的に指揮を執り、要所である二百三高地を奪取。

数万の犠牲を出しながらも旅順を攻略し、艦隊の砲撃により港内の旅順艦隊を
全滅させる事に成功したのであった。

そして日本の連合艦隊は急ピッチで艦船を整備、
バルチック艦隊を日本海で迎え撃った。

「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」

旗艦「三笠」のマストに翻った信号旗(Z旗)。
この海戦で東郷平八郎司令長官のもと、日本海軍は戦史に類をみないパーフェクト勝利を治め、
ロシア海軍を壊滅させたのであった。

この「三笠」は横須賀に保存されているので一度拝艦することをお勧めする。

一方大陸で激戦を繰り広げる陸軍は、奉天で最後の大会戦に挑んだ。

激戦に次ぐ激戦を繰り広げた結果、遂にロシア軍を撃退する事に成功するが、
既に日本経済は疲弊しきっており戦争を継続する能力はゼロに等しかった。
この機に日本はアメリカルーズベルト大統領を通じて和平交渉を実現させなければ、
あとは亡国へまっしぐらの状態。

何としてもこの機に和平へ持ち込む必要があったが、
無事和平交渉が実現。しかし日本の状態を見抜いていたロシア外相は
賠償金を一銭も払わず和平を実現。戦勝国日本は戦争に勝ったものの、

賠償金を得られず借金だけが残るということになった(大陸での権益は得たが)。

これに納得できない日本国民。
日比谷焼打ち事件等、各地で暴動が起き戦争継続が叫ばれ、
ポーツマス条約を締結して帰国した小村寿太郎は命の危険があるほど
世論は納得しなかったため、帰国した小村を桂太郎や伊藤博文が「死なばもろとも」と
腕を取って歩いた。それほど、日本はギリギリの状態だったのである。

皇室に伝わるエピソードとして、明治天皇の妃が日本海海戦の心配で心労が重なった折、
夢に「俺、坂本竜馬ってんだけど、今度の海戦は絶対勝つから安心するぜよ」とやった。
妃は坂本竜馬とか知らないから(当時は有名人じゃなかったので)、その夢を
侍従に話すと、なんとその侍従は元海援隊で坂本竜馬の弟子だったので、
「これこれこういう風体じゃありませんでしたか」みたいな事を聞いたらドンピシャ的中。

だったみたいなエピソードが残っている。

ちなみに、母の祖母であるフイノ婆ちゃんが天草に生まれたのは開戦前年の明治36年。
和装でお歯黒のお婆ちゃんだった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

WP-SpamFree by Pole Position Marketing